Part 4 2013年マン島TT、レースレポート

ノートンが挑むのは、SBKに準じたチューンアップが認められた1000ccスーパースポーツで争う「スーパーバイクTT」、そして好タイムを叩き出したライダーとマシンのみが出場できる「シニアTT」の2クラスだ。ライダーは、イアン・マックマン選手(#21)とダニエル・ヘガティ選手(#38)。イアン選手は2007年から、ダニエル選手は2010年からマン島TT参戦のキャリアを持つ実力派だ。

「SG2はバランスがとても良く、安定したマシンだ。これまでにドニントンパークで2回、マロリーパークで1回、合計3回テストライドしているが不安な部分はないので、自信を持って走らせられる」
イアン選手がそう話すように、5月30日に行われたスーパーバイクTTプラクティス(予選)では、両選手ともにトラブルなく完走。さらにセッティングを詰めるための洗い出しにかかった。
ノートンのピットはいつも大忙しだ。大勢のファンが詰めかけ作業を見守る中、2台のSG2はいつもフェアリングが外され、メンテナンスとセッティングが行われている。最高のマシンを最上の状態で走らせるため、ライダー、エンジニア、メカニックがギリギリまで作業を続けているからだ。チーム監督も務めるスチュアート・ガーナーも自らドライバーを持ち、SG2の完成度をより高めるために日暮れまで手を動かしている。
31日の予選ではリザルトを残せず、6月1日の予選ではイアン選手が走りきるものの結果はふるわなかった。難航するマシンセッティングに、ピットクルーたちの表情にも焦りが見えはじめる。しかし彼らは粘り強くマシン調整に全力を尽くし昼夜を問わずマシンに触れ、イアン選手とダニエル選手の言葉に耳を傾けた。

そして迎えた6月2日、悪天候のため順延されて行われた「スーパーバイクTT」決勝。イアン選手は34番目、ダニエル選手は65番目からスタートを切ると、ピットクルーたちのセッティングが功を奏し、1周目のラップを刻んだときにはイアン選手は29位、ダニエル選手は34位と驚異の追い上げを見せた。
グランドスタンドに戻ってくるノートンは、V型4気筒エンジン特有のエキゾーストノートを響かせる。英国メーカーのマシンが英王領マン島で開催されるレースで快走することに、多くのファンは沸き立った。
6周で行われる「スーパーバイクTT」は、2周おきのピットインが必須で、ガソリン補給とヘルメットのシールドの交換が欠かせない。ピット作業では素晴らしいチームワークを発揮し、滞りなくライダーがピットレーンを出ていく。タイムロスはない。そしてイアン選手は18位というリザルトを残した。

マン島TTのなかで最高峰に位置づけされるレース「シニアTT」は快晴の下、予定どおりの7日に行われた。2人のライダーは1周目から順調な滑り出し。イアン選手は18分30秒台、ダニエル選手も19分フラットでラップを刻む。ダニエル選手はついに18分30秒台をマークし、両選手とも6周約360kmに及ぶレースを見事に完走。イアン選手は24位でブロンズレプリカ(トップのタイムから110%以内にゴールしたライダーに贈られる)を獲得、ダニエル選手も36位完走と、ともに素晴らしいリザルトを残してTTを終えたのだ。

「まずは無事にシニアTTを完走できたことがうれしい。この1年、取り組んできたことが間違っていなかったことが証明されたわけですし、私たちの計画がひとつ実現へ向けて進んだことになります。まずはSG2を完走させた二人のライダーと、チームを支えたすべてのメカニックとエンジニアたちに敬意を表したい」
CEOスチュアート・ガーナーはそう語り、マン島TTを完走した喜びをチームスタッフ全員と分け合った。

ノートン復活劇の幕は開いたばかり。これから始まる新しい物語がどんなものになるのか、非常に楽しみだ。

 


シニアTT決勝レース。マウンテンコースにある「ガスリーメモリアル」付近を走行するダニエル選手(#38)。


決勝レースではライダーが10秒おきにスタートしていく。マーシャルの手がライダーの肩をポンと叩き、離れたときがスタートの合図。こうしたコミュニケーションもマン島TTの特徴だ。


シニアTT決勝レース完走後、ピットで記念スナップに収まったイアン選手、ダニエル選手そしてピットクルーの面々。このあとスタッフ全員で打ち上げに繰り出した。


レース中は各チームにコースサイドのピットが提供される。おもにタイヤウォーマーのセットやピットクルーの待機場所として使われ、ライダーの名と出身国の国旗が示される。


シニアTT予選、ユニオンミルズを駆け抜けるイアン選手。ここは右から左へ切り返す高速コーナーになり、途中のギャップでフロントを浮かせるライダーも多い。

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